日々早々エッセー
バックナンバー集（2024年 7-12月分）
＜＜2024年：7-12月分 エッセータイトル＞＞
08/02 常民と世間 07/26 夏の夜 07/19 温暖化寒冷化 07/12 お盆と海の日 07/05 クリーンやエコ
2024年8月2日
常民と世間
常民という概念は民俗学の泰斗柳田国男が言い始めた概念らしいが、その土地に伝わる民俗伝承を保持している人々のことだというが、同じく民俗学の宮本常一が「忘れられた日本人」の中で、一見その土地にずっと代々暮らしているかのように思える人々も、男性女性にかかわらず、一度は村を離れ、よその土地でいわゆる「世間」というものを体験し、村の外の世界を見聞きしてから、再び村に帰ってその地で一生を過ごすといったことをしている―――と書いていたが何か思い当たるような気がした。
今で言うならUターンというのだろうか、確かに多くの日本人が一度は生まれた地を離れ、よそで色々な経験をしてから、又故郷に戻るという例は多く、そういう経験をすることが確かに「常民」となって民話なり村の祭りやしきたりといった伝統をしっかりと受け継ぐためにも必要なことと認識されているのかもしれない。それは宮本常一が調査した昭和の時代と今も余り変わらないような気がする。
勿論、タカさんのように生まれてこのかた各地を転々としている人も多いが、地方に行くと多くの人が一度は故郷から出て「世間」に触れ、又何時か生まれ故郷、もしくはその近くに戻ってきているということはあるようだ。
タカさんが海外で知り合った日本人の内何人かは、今や故郷に戻って暮らしているし、それが例え東京生まれ、東京育ちであっても老後の今は、年一回の小学校の同窓会にも出ている―――という例なんかも結構ある。
タカさんが卒業した鹿児島の小学校のクラスメートの何人かは今も地元のクラス会で集まっているかもしれない―――なんだかすごく羨ましいような気もしてきた。
(8/01/24 10:00pm)
2024年7月26日
夏の夜
夏至から一ヶ月が近くが経ち、日没も幾らか早くなってはいるのだが、それでも夏の日は長い。
北緯が35度の東京では夏の昼時間は14時間30分位だが、これが北緯51度と大分北寄りになるロンドンでは東京より2時間以上長い16時間30分位にはなる―――すなわちいわゆる「夜間」と言える時間は24時間中、7時間位しかないということになる。
それでも未だ夜があるだけマシといえるのは北緯66度30分以北の地域（いわゆる北極圏）に行けば夏の間は夜のないいわゆる白夜になってしまうのだ。
一度夏至近くにノルウェーを旅行したことがあるが、夜11時過ぎになっても街では子供達が遊んでいたのには驚いたものだ。
白夜になる地域は、逆に冬になると日が一日射さない極夜というのが続くのだからこれはこれで大変だ。
ノルウェー旅行からの帰りの飛行機で隣の席に座ったノルウェー人に「極夜の季節には間は何をして過ごすのか」と聞いたら「やることがないから一日中寝てる」と冗談で答えたので、「クマではあるまいし人間は冬眠できないのだろうに」といったが―――いや、本当に北極圏の人たちは、冬はどうしているのだろうか―――。
それにしても、暑い日が続く夏だけに少しでも気温が下がる夜が来るとホッとするし、やっぱり夏の夜といえば、ビールがおいしいのが嬉しい。暑さに弱いタカさんだが、夏の夜はそんなに嫌いではない。
(7/25/24 10:00pm)
2024年7月19日
温暖化寒冷化
青森の三内丸山遺跡は、今から6000年前から4800年前ごろまで1000年以上の期間栄えた大規模縄文遺跡だが、これほど大きな集落が長期に亘って維持できたのは何よりも食糧が豊富だったからだ。
当時の地球は現在よりも温暖であったため、海岸線は今よりもかなり陸側に迫っていた。今は海岸から遠い三内丸山も、その当時は海岸が近くに迫ってたから貝などの海産物も多く手に入ったし、今は茨城以南にしか育たない栗や胡桃なども収穫できていたから、縄文人はこれを計画的に栽培して収穫していたという。
埼玉の志木や狭山などの海から遥かに遠い地にも縄文遺跡や、貝塚があるのも、この時代には海が内陸まで入り込んでいる「縄文海進」といわれる温暖な時期だったことの証左だ。温暖化は当時の人類にとっては良かったのだ。
逆に寒冷化した時代には人類は結構苦しんでいて、例えば今から1000年程まえの平安時代には寒冷化が進み、農作物の収穫量が落ちて人々は度々飢饉に襲われていたし（寝殿造りという間仕切りのない大広間の中で暮らしていた紫式部なども寒さには苦労したことだろう）、ヨーロッパでも食料を求めて北方民族が温暖な南欧に大移動してきてローマ帝国などは滅びてしまったし―――寒冷化は人類にとって厄災であったのだ。そうそう、マンモスの絶滅にしても、寒冷化による食糧不足が原因だとする説が有力だ。
暑い日が続く昨今、高齢者にとってはクーラーや扇風機は欠かせないが、寒冷化が進めばやはり暖房が欠かせない。暖房は冷房の約倍のエネルギーコストがかかることを考えればここでも寒冷化は人類にとっては厄災だといえる。
エコが叫ばれる昨今だが、衣食住、いずれをとっても金がかからない――すなわちエコなのは寒冷化より温暖化なのだと考えると、金をかけて温暖化防止を叫ぶことが何だかインチキ臭く思えてくる。
(7/18/24 10:00pm)
2024年7月12日
お盆と海の日
海の日という祝日が制定されたのはかれこれ30年程前に過ぎないから今一つ馴染みが薄い。カレンダーをみていたら来週月曜の7月15日が祝日マークになっていたから、一瞬「あれ？ お盆って祝日だったっけ？」と思った位でタカさんにとっては「海の日」よりもまだ「お盆」の方が刷り込みは強い。（もっとも、我が家のお盆は「旧盆」だからまだ1か月先の話だが）
核家族化が進んで最近はお盆という行事は都会では、すっかりおなじみが薄くなってしまっているようだが、地方ではどうなのだろうか。
いまからかれこれ60年程前の夏3カ月ほど鳥取の山奥の生まれた村のお寺に下宿していたことがあるが、このお盆の時期はお寺の方丈さん（和尚さん）は、村中の檀家廻りで大忙しで、小僧さんも方丈さんのおともについて回るので何の手伝いも出来ないタカさんは何だか申し訳ないような気持ちになったものだった。
釈尊が始めた当初の仏教には来世という考え方はなかったので勿論、浄土だとか地獄といった考えもなかったが、仏教が日本に伝わって以来、日本古来の祖先崇拝の考え方と結びついて、貴族社会などではお盆のような行事が行われるようになったという。
そのお盆が庶民にも広がったのは江戸時代以降のことであるというから、お盆も海の日ほどではないにせよそんなに古くからある行事ということでもないようだ。
そうはいうもののお寺住まいの経験を持つタカさんにとっては、段々にお盆という行事がフェイドアウトして言っているように見える昨今は、いよいよ自分の生きてきた時代が過ぎ去っていくような気がしてなんだか淋しいようにも思う。
ちょっと前までは地元の商店街や飲食店の多くはお盆の期間、数日間休業する所が多かったからお盆前にはどこの家も食料品の買い出しなどで結構大変だった。今都会では盆や正月でもスーパーはひらいているし、そもそも都会では買物に出たりしないで宅配を頼んでいるところが多いからお盆前の買い出し、なんていう思い出話をしても孫の世代には全く通じないことだろう。昭和は遠くなりにけり、である。
(7/11/24 10:00pm)
2024年7月5日
クリーンやエコ
クリーンエネルギーにはいろいろな種類がある。化石燃料を燃やしりして作った電気は確かに使う現場では二酸化炭素を発しないから見かけクリーンだが人里から離れた発電所で化石燃料を使って電気をおこしていればそれは水洗便所がきれいだというが、下水管や下水処理場を見ていないからクリーンだと言っているのと同じで、発電から使用までを含めて全てがクリーンというのとは全く違う。
例えば、いま脚光を浴びている水素エネルギ－にしても水素が自然界に豊富にあるといえども例えば水から水素を取り出す際に使う電気エネルギーを太陽光や風力などで得た電気で取り出せば（グリーン水素といわれる）確かに見かけクリーンエネルギーといえるが、パネルや風車を作る際に大量のCO²を排出するし、又耐用年数が来たこれらを廃棄する際にも大量の二酸化炭素を排出する。（今、中国製のパネルが各地で色々問題を起こしいる）石油や石炭などを改質して取り出す（ブルー水素）や（グレー水素）などと言わる方法も二度手間が必要だしコストの面でも問題があり過ぎだ。
二酸化炭素を排出しない原子力エネルギーは、福島原発以来忌避感が強いからもうそうそうこれの推進したいするところはないだろうし、夢のエネギー等と言われてもてはやされた核融合エネルギーにいたってはこれから先、実現まで何十年、何百年かかるか想像もつかない。
昨今のように34度打35度だといった暑い日が続けば、現代人はクーラーをガンガンかけて息をひそめているしかない。電気を節約してうちわで仰ぐなんていうことをやっていては、高齢者はバタバタ倒れていくことだろう。
そう考えると、あまりに過度な「クリーン」だの「エコ」の連呼には偽善っぽいものを感じてしかたがない。
(7/04/24 10:00pm)
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